THE ZEN WARS

THE ZEN WARS EPISODE8 ~お山配役 鐘司~

我々のいる寮舎は、看読寮であるが、またの名を「鐘司寮」ともいう。

というか、鐘司寮が本来なのであるが、まずはじめに勉強をすることが大切なので、看読寮なのだと思う。

鐘司、文字の通り鐘を司るのである、山内の数々の鐘を鳴らすのであることは前述したとおりだ。

係りでいうと、鐘司當番は、みんなより30分前に起きる。

そして、起床時間の振鈴が鳴ると、坐禅をはじめる合図のための「木版」を鳴らす。

その後、お袈裟を着けて「鐘鼓楼」(鐘と太鼓などがある建物)へ行く。

「鳴鐘の偈」(めいしょうのげ)というものを唱え、三拝する。

そして、3名のカラス(合図を送る係り)の合図を経て、「点掛け」(てんがけ)というものが始まる。

木製のバットで太鼓と鐘を思いっきり鳴らすのである。

これは、時を知らせるものなので、

太鼓で時間を、鐘で分を知らせる、これを聞くと今何時何分なのかが分かる仕組みなのだ。

その後、坐禅のための鐘を鳴らす。

これを「暁天鐘」というが、中中小大で打ち出したら、

20秒後に大を9回(15秒間隔) 小を26回(6秒間隔) そして大

20秒後に大を9回(15秒間隔) 小を25回(6秒間隔) そして中大

20秒後に大を9回(15秒間隔) 小を24回(6秒間隔) そして中小大

と、20分弱で108回を鳴らすのだ。

これで煩悩がふり払われるという仕組み。

終わると、またバットを持って点掛けで時間知らせ、

次には「大開静」といいい雲版(青銅製の板)を電気を付けたり、打てと言う合図に合わせ、

さらには、遠く向こうで鳴る鐘や木版と交互に合わせながら打って、

僧堂のみんなを導いていくのである。

そして、まだまだ引き続き仕事がある。

そのまま、法堂(はっとう)(本堂)へ行き、またそこにある鐘鼓楼に登り、

修行僧のみんなが来るのを待つ。

内陣(本堂の奥)からの合図で、法堂の大きな鐘を鳴らし、上殿の合図を出すのだ。

三会を打ち上げていくのだが(3セットの区分けして、ゆっくりから早く打っていくこと)

誰が何処を通り過ぎたかに合わせて、打ち上げるのだ、

瞬きひとつ許されない状況なのだ、しかも、ここは法堂!

お山の中で一番静粛であり、一番神聖であり、一番怖いところなのだ。

一打間違えただけで、あとでお仕置きをくらうことも稀ではない!

僕もお山にいる1年3か月の間に、2打よけいに打ったおかげで、

1時間30分ほどの正座と合掌を余儀なくされたことが二度ほどある。

朝課中も、お経に合わせたり、

供頭(くじゅう)(法堂を仕切る恐ろしい人々)の動きに合わせ、鐘や太鼓を鳴らす。

めでたい時などは、4人がかりで太鼓を鳴らしまくることもあるのだ。

まるで鼓童のような状況だ!

朝課の後に諷経(法要)などがあると、それを繋ぐために鐘を鳴らす。

導師が代わるか代わらないかで打ち方が変わる、

すべてが終わっても、走って、最初の鐘鼓楼に上がり食事のための雲版を鳴らす。

これが鳴らないと、みんなの食事が始まらない、

打ち終わって、走って食事会場へ向かい、みんなが食べ始めている中に入り、

朝の食事を頂くのだ。もちろん、ごちそう様は一緒である。

これでひと段落ではあるが、お粥とはいえ、食べた気がせず、

食後は、またもや看読寮での朝課と説教なのだ・・・・・・・・・

他にも、鐘司ならではの仕事もある。

鐘司非加番は、大梵鐘というものを叩く役目がある。

これは、お山の中でも、たった一人に与えられた役柄だ。

日本一級の大きな鐘!

ゆく年くる年に出てくるような、最大級の鐘を鳴らすのだ。

大きさは、高さ3メートルはあるであろう、アルファードよりもでかい鐘が吊るされているのだ。

さらには、長さ1.5メートルはある撞木(しゅもく)(吊るしの棒)を大きな綱を両手で持ち、

力いっぱい叩きつけるのだ。

事細かい作法がある。

まず、三宝殿へ行き、「拝敷」(はいしき)(お拝をするための敷物)を借りる。

借りるための「差定」(決まり文句、式次第)があり、一字一句間違っても貸してはくれない。

間違ったら何度でも、初めから繰り返すのだ。しかも、MAX声で。

やっと拝敷を借りると、梵鐘まわりの掃除をする、吊るし某を抑えてある南京錠も開け、

拝敷を定位置に敷、いざ10:55「鳴鐘の偈」(めいしょうのげ)を唱え三拝。

11:00 お堂のヘリに両足をかけ、吊るし某の縄を両手で持ち、

全体重を吊るし棒に預けるように、身体を後ろに反らせ、

全身全霊の背筋力で吊るし棒を前にふり払うのだ。

1回叩くごとに偈文を唱えてお拝をする。

90秒間隔で17回、最後は30秒間隔で18打目を叩くのだ!

そこへ、口宣を言いに必ずといっていいほど古参がやってくる。

やれ、拝敷のたたみ方が悪いだの、音が小さいだのと言いに来るのだ。

ある古参は、音が小さいからもっと両足を踏ん張って、身体をのけ反らせて打つんだ!!といい、見本をみせた。

その後、僕が同じように打った。だんぜん、僕の音のほうが大きい。

それはそうだ、その時、僕はまだ現役全日本デモだった。(任期中だったので)

選手は引退しても、まだまだ筋トレが趣味だった。

背筋はおよそ240キロはあっただろう。

誰に口宣入れてるの?などと思いながらも、僕らにはハイをいう返事しか許されない。

なので、「今度からは、そうういうふうにやれよ!」と言われて、「ハイ!!」とMAX声で返事をするだけなのだ。

あの、地響きにも似た、町中を「ゴーン~~~」という音は、疲れた身体を震わせ。

高台に登れるというだけで、ちょっと抜け出した気分になれる大梵鐘は、僕にとっては、

一番のストレス解消なのであった。

そんな鐘司のお役、ここ看読寮には、摩訶不思議なお役があるのだが、

今後、ず~~~っと、あの「差定」という悪魔に付きまとわれることを、

この時、僕は知る由もなかったのだ!!

Posted on 2011.10.02

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